全ての物質は非常に小さい粒子から構成されています。その物質を構成する分子は、温度によって異なる分子運動をします。分子はいくつかの原子が化学結合により結びついて出来ており、どんな結合もそれぞれ固有の振動数を持っています。通常は結合の振動の周波数に共鳴する光が分子運動を大きくし、物質の温度を上昇させます。これは地震の建物の揺れと似ています。地震の周期と建物の固有周期が合うと建物の揺れが強くなっていきます。
赤外線は、0.78μmから1mmまでの、可視光線よりも長い波長を持つ光線です。光源から出る光のうち、赤外線が物質に入射すると、物質はその光線を「反射」、「吸収」、「透過」します。吸収した光線が分子結合の振動数と合えば、振動を大きくしします。分子同士は常に振動し、この振動は熱エネルギーそのものなので、振動が大きくなるにつれて熱エネルギーも大きくなります。
ある面に入射したエネルギーの反射率と透過率と吸収率の合計は必ず1になります。
反射率(ρ)+透過率(τ)+吸収率(α)=1(入射光)
エネルギー保存の法則の通り、変換前のエネルギーと変換後のエネルギーの総量は常に不変だからです。
ほとんどの物体は、不透明な物体ですから、透過率(τ)=0となり、反射率と吸収率のみになります。
反射率(ρ)+吸収率(α)=1(入射光)
キルヒホッフの法則により、熱力学的平衡の時、吸収率ελ=放射率αλとなります。
従って、吸収率が高い物質は、放射率も高いです。
すべての物体は絶対温度に応じてあらゆる波長の電磁波を放射しています。この電磁波が他の物体に吸収されたときに熱エネルギーに変わり、物体の温度が上昇します。この電磁波の内、熱放射の波長はは約λ0.4μm(可視)~λ100μm(遠赤外線)の範囲です。物体の熱放射は表面温度や表面状態によって変わります。研磨された表面よりも、凹凸があるザラザラした表面の方が吸収率が良いです。