ハロゲンランプのガスの種類と仕組み

ハロゲンランプのガスの種類

ハロゲンランプはランプ内に不活性ガスと微量のハロゲンガスを封入した白熱電球です。

不活性ガス

不活性ガスにはヘリウム(He 4.00g/mol)、 ネオン(Ne 20.18g/mol)、 (窒素(N2 28.02/mol))、 アルゴン(Ar 39.95g/mol)、(二酸化炭素(CO2 44.01g/mol)),クリプトン(Kr 83.80/mol)、キセノン(Xe 131.29g/mol)、ラドン(Rn 222.000/mol)があります。
ヘリウム・ネオン・アルゴン・クリプトン・キセノン・ラドンは空気中に微量しか含まれていない為、貴ガスやレアガスとも言われています。
フィラメントに使われるタングステンの蒸発抑制効果は、原子量が大きいもの程効果があります。 原子量が大きいもの程熱伝導率が低くフィラメントの熱損失を抑えることができます。 発光効率にして5~10%ずつ上昇します。
“理論上は最も原子量が多いラドンが効果が高いです。 しかし、ラドンは短半減期のアルファ線を放出する有害な放射性ガスなので使用できません。二酸化炭素も1000℃以上になると一酸化炭素と酸素に熱分解される為、使用できません。
その為、キセノンがタングステンの蒸発に最も効果的と言えます。
しかしキセノンやクリプトンは価格が高価なため、あまり使用されず、不活性ガスの中では価格が安いアルゴンが使用されています。
しかし、アルゴンだけでは電気絶縁性が不十分な為、フィラメントが点灯時に断線するとアーク放電が起きます。その対策として電気絶縁性が高い窒素を微量に混合しています。小型化したランプで、フィラメントが短いと電気の負荷が多くなるので、寿命は短くなりますが、電気絶縁性が高い窒素のみを使用する場合もあります。

ゲッター

真空を使う製品で不純物を取り除くために使われる化学材料をゲッターと呼んでます。
白熱球ではバルブ内に微量の水分や酸素などの不純物が混入していると、ウォーターサイクルを引き起こし、タングステンを消耗させ短寿命の原因となりますので、バルブ内の水を取り除く必要があります。対策として種々のゲッターが研究開発されています。白熱電球では製造過程で燐ゲッターを使用して真空にする方法が採用さています。タングステンフィラメントを燐と水の混合液に浸し、ランプ排気後に通電しグロー放電を発生させて残留ガスを除去する方法です。燐ゲッターは真空度を高めるために使用されていますが、そのほかに黒化現象を防止するゲッターとして封入されたのがハロゲン元素です。
ハロゲン元素をゲッターとして利用し黒化を減少する方法は古くから採用されており、1892年には塩素 を入れたカーボンフィラメント電球が発売されました。1933年にはヨウ素を封入し、蒸発したタングステンを沃化タングステンにしてバルブに付着するのを防ぐアイディアが特許提案されています。このように従来の電球にハロゲン化合物を封入する方法はバルブの黒化を防ぐ効果はありましたが、低温部分のタングステンフィラメントと反応し短寿命になるという問題が発生 し、実用化はあまり進みませんでした。また、ヨウ素は製造時に気化してバルブ内に入れる作業が必要で、ハロゲンサイクルが安定作用する範囲が狭いなどの欠点があったので他のハロゲンガスが検討されます。1965年にフィリップスのヤーペンス(T’. Jampens )とウェイヤー( van der Weijer)により臭素の有機化合物を使用する電球が発表されました。臭素 の化合物(CHBr3、CH2Br2 など)は蒸気圧が高いのでそのまま気体として封入することができ、活性が高 いのでハロゲン電球の種類を広げることが出来るようになりました。その後、塩素の化合物も使用されるようにな り、複写機露光用のランプに使用されています。
また、ゲッターとして一般電球に多用されているのはジルコニアです。しかしハロゲンランプヒーターのような場合はこれは使いにくいので、タンタル(Ta)が使われる事が多いです。タンタルは鉛に似た柔らかい高融点金属で、暗赤熱状態(約700℃)でその体積の数百倍の水素を吸収しますので、フィラメントの支持部品にこの金属を使ってゲッターの働きをさせています。
もちろん2200K以下のランプヒーターでもハロゲンを入れているものもあります。ハロゲンを入れればウォーターサイクルを阻害する方向に働くので、残留水分が少なければ長寿命なヒーターも作れます。これはハロゲンを入れる方がコストが低いという理由が多いです。寿命が5000時間~20000時間の設計で高信頼性のランプヒーターを作るには、ハロゲンを入れるよりもハロゲン無しでゲッターを入れる方が安全す。

ハロゲンガス

ハロゲンガスにはフッ素(F 19.00g/mol)、塩素(CL 35.45/mol)、臭素(Br 79.90g/mol)、ヨウ素(I 126.90g/mol)の4種類があります。原子量が小さいほど反応性が高くなるため、ヨウ素が最も穏やかな反応性です。
ハロゲンランプの初期ではハロゲン物質としてヨウ素が封入されていました。しかし、ヨウ素は製造時に気化してバルブ内に入れる作業が必要で、またハロゲンサイクルが安定作用する範囲が狭いなどの欠点があったので、他のハロゲンガスが検 討されて臭素が現在は主に使用されています。
臭素はヨウ素よりも反応性が高く、ハロゲンサイクルの効果に寄与します。
ヨウ素のハロゲンサイクルで対応しきれずにタングステンの蒸発・黒化現象を引き起こしていた場合でもハロゲンサイクルが対応できるようになり、ハロゲンランプの種類を広げることができるようになりました。
また、ハロゲンサイクルで最終的にタングステンがフィラメントに戻る場所にはばらつきがあります。局部的に蒸発が促され、その部分の温度が加速的に高くなり、いわゆるホットスポットの箇所で断線します。
また、ハロゲンガスの量によっては黒化現象が起こる場合もあります。黒化現象を起こさない最小限のハロゲンガスを封入する必要があります。ハロゲンガスの量を最小限にすることで、ハロゲンサイクルを穏やかにすることでランプが長寿命化と安定化します。最低限必要とされる濃度は不活性ガスに対してモル比で約0.1%です。
また、ハロゲンガスの量によっては黒化現象が起こる場合もあります。黒化現象を起こさない最小限のハロゲンガスを封入する必要があります。ハロゲンガスの量を最小限にすることで、ハロゲンサイクルを穏やかにすることでランプが長寿命化と安定化します。最低限必要とされる濃度は不活性ガスに対してモル比で約0.1%です。
色温度が2200K(K→ケルビン:絶対温度の単位。℃にプラス273した値)程度又はそれ以下のランプヒーターはハロゲンを入れる必要はありません。そのような色温度ではヒーターの設定寿命内(5000時間とか20000時間)でのタングステンの蒸発はわずかであり、ハロゲンサイクルは不要です。(従ってフィラメントはほとんど消耗しない→寿命はこれによって制限されるのではない)

ハロゲンサイクル

ハロゲンランプはランプ内にアルゴンや窒素といった不活性ガスに微量のハロゲンガスを封入した白熱電球の一種です。
ハロゲンガスを封入することにより、フィラメントの材質であるタングステンの損耗を防ぎ、フィラメントをより高温にすることが可能で、ランプの黒化減少が起きない、さらには光の明るさが低下しない等のメリットがあります。これはハロゲンサイクルによるものです。ランプ点灯中に高温になったタングステンのフィラメントは蒸発して原子状となりランプ内を移動します。移動する際にランプ内のハロゲンと化合しハロゲン化タングステンを形成します。ハロゲン化タングステンは対流と拡散によりフィラメント付近に移動します。点灯中に高温となったフィラメントによりハロゲン化タングステンが1400℃以上になると分離しタングステンはフィラメントに戻り、ハロゲンは再び蒸発したタングステンとハロゲン化タングステンを形成していきます。このサイクルをハロゲンサイクルと呼びます。
ハロゲンサイクルを実現するためには点灯時に、ランプのバルブの内壁を250℃以上に保つ材料を使用する必要があります。その為、バルブには耐熱の石英ガラスなどを使用されています。
蒸発したタングステンは再びフィラメントに戻りますが、完璧に元通りにはなりません。ハロゲンサイクルで最終的にタングステンがフィラメントに戻る場所にはばらつきがあります。局部的に蒸発が促され、その部分の温度が加速的に高くなり、いわゆるホットスポットの箇所で断線します。ハロゲンサイクルが繰り返されることでフィラメントに凹凸ができて、最終的にこの凹凸が原因で断線してしまいます。

W+(Om+Xn) →(WX+WO+WOX+WO2+X2)→WX→W+O

電球バルブへの封入ガスの高圧封入

封入ガスの圧力が高い程、電球の効率に対する寿命は長くなります。加圧によりガス分子密度が上がり、蒸発したタングステンがガス分子に衝突し、タングステンの移動が抑制されます。フィラメントの周辺の蒸気圧が上がり、飽和状態に近づくので蒸発が抑制されます。
ハロゲンランプ内にガスを封入する方法としては、ガラス排気管を溶着したバルブを使用し、バルブ内を真空にした後に液体窒素で冷却しながら封入ガスを封入を充填します。液体窒素により封入ガスが液化し体積が減少し内部圧力が下がります。
封入ガスは1×10^5~4×10^5Paの高圧で封入されます。点灯中の圧力はこの1.3倍~7.0倍に達します。