樹脂加熱の基礎知識-3 樹脂の種類-1 結合と分子の型

樹脂加熱の基礎知識-3 樹脂の種類-1 結合と分子の型

原子は集合して分子を作ります。
分子と分子の間には「分子間力」という力が働き、固体化(結晶化)します。
化学結合とは原子が安定を求めて閉殻構造を獲得するような反応であり、このような理由から、原子は分子や結晶などを作って存在しているのです。
樹脂には主に以下の4つの結合が有ります。

1.共有結合


共有結合は、原子同士で互いの電子を共有することによって生じる化学結合です。 結合は非常に強く、分子は共有結合によって形成されます(単原子分子は除きます)。 また、共有結合によって形成される結晶が共有結合結晶です。 配位結合も共有結合の一種です。

2.イオン結合

イオン結合は正電荷を持つ陽イオン(カチオン)と負電荷を持つ陰イオン(アニオン)の間の静電引力による化学結合です。
この結合によってイオン結晶が形成されます。
共有結合と対比され、結合性軌道が電気陰性度の高い方の原子に局在化した極限であると解釈することもできます。

3.水素結合

水素結合は電気陰性度が大きな原子(陰性原子)に共有結合で結びついた水素原子が、近傍に位置した窒素、酸素、硫黄、フッ素、π電子系などの孤立電子対と作る非共有結合性の引力的相互作用です。

水素結合には、異なる分子の間に働くもの(分子間力)と単一の分子の異なる部位の間(分子内)に働くものがあります。

電気的に弱い陽性 (δ+) を帯びた水素が(上図:水分子の例)周囲の電気的に陰性な原子との間に引き起こす静電的な力として説明されます。

つまり、双極子相互作用のうち、特別強いもの、として考えることもできます。

ただし水素結合はイオン結合のような無指向性の相互作用ではなく、水素・非共有電子対の相対配置にも依存する相互作用であるため、水素イオン(プロトン)の「キャッチボール」と表現されることもあります。

水素結合は水などの無機物においても、DNAなどの有機物においても働きます。

水素結合は水の性質、たとえば相変化などの熱的性質、あるいは水と他の物質との親和性などにおいて重要な役割を担っています。

水素結合をする物質は、水によく溶けます。 水と水素結合をして溶媒と溶質との間の引力が強くなるからです。

4.ファンデルワース結合

分子は電気的に中性で、全体としては電荷を持っていないので、陽イオンと陰イオン間で働くような強いクーロン力が分子間に働くことはありません。

しかし、分子はミクロに見れば、原子核とその周囲を動き回る電子の集合体であるから、分子内で瞬間的に電子が不均等に分布することがあり、そのため分子内にδ+とδ-の部分電荷が生じます。

この一時的に分極した分子は隣接した分子を一時的に分極させ、分子同士は互いに弱く引き合うことになります。

分子間のこのような相互作用をファンデルワールス力(Van der Waals force)といいます。

このファンデルワースの力の結びつきをファンデルワース結合といいます。

分子間力による一時的な静電相互作用はイオン結合によるものに比べて1/10~1/1000の強度しかありません。

しかし、高分子の非イオン性の原子の数は膨大なので、分子間力に基づく化学結合も積み上げられると結合力としてかなりの影響力を持ちます。

すなわち、分子を繋ぎ止めている分子内結合を除き、分子間力は物質を構成する分子をひきつける力を提供し物体の形状や特性を表現しています。

5.共有結合の結合エネルギー

I – I 151 kJ/mol
F – F 159 kJ/mol
Br – Br 192 kJ/mol
Cl – Cl 247 kJ/mol
H – H 435kJ/mol
O = O 498 kJ/mol
HO – H 499 kJ/mol
CH3 – H 439 kJ/mol
CH3 – CH3 385 kJ/mol
CH2 = CH2 682 kJ/mol
N ≡ N 945 kJ/mol

記号の意味 -:単結合 =:二重結合 ≡:三重結合

6.分子間力の強さ

分子内結合 分子間結合 結合強度比
共有結合 × 強大
イオン結合 1000
水素結合 100
ファンデルワース結合 × 1

※ファンデルワース結合は分子単体の値です。 分子数が数10万単位になる高分子の樹脂では非常に強力になります。

モノマーの重合収縮率

樹脂名 重合収縮率%
エチレン 66.0
塩化ビニル 34.4
アクリロニトル 31.0
エチレンオキシド 23.0
メチルメタクリレート 21.2
酢酸ビニル 20.9
ジアリルフマレート 17.2
n-プロピルメタクリレート 15.0
スチレン 14.5
ジエチレングリコールビスアルカリカーボネート 14.0
エピクロルヒドリン 12.0
ジアリルフタレート 11.8
N-ビニルカルバゾール 7.5