1-5.配管用ネジ

1-5-1 歴史

シケリアのディオドロスはこの発明がアルキメデス(Archimedes of Syracuse、BC287 -212)がアレキサンドリアで学んでいた青年時代に行われたと記しています。
ねじ構造はアルキメデスのような天才機械学者によってのみ思い描くことができたとする者もおり、実際「ねじは中国で独自に生み出されなかった、唯一の重要な機械装置である」とも言われています。

ジョセフ・ウイットウォース(イギリス人 Joseph Baronet Whitworth 1803-1887)がねじのさらなる大量生産技術を確立しました。
彼は顧客から製作を求められる多様なねじの形状を整理した上で、1841年には山の角度を55度とするなど独自の規格を決めて公表しました。
この「ウィットウォースねじ」規格が広がって英国の国家規格BSにまで発展普及し、今日のねじ規格の基礎となりました。

ウィリアム・セラーズ(アメリカ人 William Sellers  September 19, 1824 – January 24, 1905)がウィットウォースねじに改良を加え、山の角度60度の「インチ系ねじ」を発表しました。
これは1868年に「セラーズねじ」として米国内標準規格となり、米国政府関係事業に全面的に採用され、「USねじ」「アメリカねじ」とも呼ばれるようになりました。
このUSねじ規格は、第2次世界大戦中に米国、英国、カナダの3ヶ国が武器に使用するための互換性のあるねじとして生み出された「ユニファイねじ」規格へと発展しました。

メートルねじは1894年にまずフランスで制定され、1898年にはフランス、スイス、ドイツが採用した、山の角度60度の「メートル系ねじ」が「SIねじ」規格として欧州域で普及し、その後も広く使われました。
このSIねじが21世紀現在、世界中で最も普及している「メートルねじ」の原形になりました。

メートル系やインチ系といった違いの他にも、各国ごとにそれぞれ異なるねじ規格が存在していたため、国際間の物流の拡大につれて不便が生じ始めました。
やがて、世界的なねじの互換性の要求が高くなり、国際間でのねじを統一しようとする動きが起こりました。
 第二次世界大戦期の中断を経て、1947年に国際標準化機構(ISO)が設立され、ねじ規格でも国際的な標準化が進められた結果、「ISOメートルねじ」規格が制定されました。

1982年にJIS B0202(管用(くだよう)平行ねじ;従来のPFねじ)およびJIS B0203(管用テーパねじ;従来のPTねじ)が改正され、呼び方が表1のように変更されましました。
新しい呼び方は、ISOの呼び方に従っています。

1-5-2 ねじの種類を表す記号

1-5-2-1 ISOメートルねじ

国際標準化機構(ISO)で規定された汎用のメートル三角ねじです。
ねじ山の角度60度。接頭記号「M」で識別される。 めねじは「MF」と表記します。
日本やヨーロッパ各国で広く使われています。
日本工業規格(JIS)では呼び径に対するピッチの細かさによって、標準的なピッチの「並目」と、それより細かい「細目」とに分けて規格が採用されています。

1-5-2-2 管用平行ねじ JIS B0202, ISO 228/1

1-5-2-3 管用テーパねじ JIS B0203, ISO 7/1

テーパおねじとテーパまたは平行めねじの組み合わせで使用され、気密性を必要とする管の接続に使われます。
ねじ山の角度55度のインチ三角ねじで、テーパの傾きは16分の1です。

最初にイギリスで規格化され、その後はJISにも導入されて日本でも広く使われている管用ねじです。
その後ISOにより国際標準化されました。

1982年に改正されたJISでは、ISO規格のテーパおねじ、テーパめねじ、平行めねじをそれぞれ接頭記号「R」「Rc」「Rp」で識別するが、JISの当該規格がISOに準拠する以前の1966年のJIS規格ではテーパねじ(おねじ・めねじ共)を「PT」、平行めねじを「PS」とそれぞれ呼んでおり、現在でも慣用的に旧式の呼称が用いられる事があります。

管用ねじの現JISと旧JIS記号対照表

規格番号 ねじの種類 改正前 改正後
B0202 平行おねじ PF□/□A G□/□A
平行おねじ PF□/□B G□/□B
平行めねじ PF□/□A G□/□
平行めねじ PF□/□B 廃 止
B0203 テーパおねじ PT□/□ R□/□
テーパめねじ PT□/□ R c□/□
平行めねじ PS□/□ R P□/□

管用平行ねじと管用テーパねじの主な規格

管用平行ねじ 管用テーパねじ ねじ山数 dまたはD d1またはD1
G1/8 R1/8 28 9.728mm 8.566mm
G1/4 R1/4 19 13.157mm 11.445mm
G3/8 R3/8 19 16.662mm 14.950mm
  1. 管用平行ねじもテーパねじも、呼びが 1/16 から 6 まで規定されていますが、配管によく用いられる3つの呼び径だけを示しています。
  2. 管用平行ねじは、管用平行おねじと管用平行めねじを組み合わせて使います。どちらも記号Gをつけて表しますが、おねじの場合には等級を表す記号(AまたはB)をつけます。例えば、おねじでは G 1/4A、めねじでは G 1/4 のように表現します。
  3. 管用テーパねじには、管用テーパおねじ(記号R)、管用テーパめねじ(記号Rc)及び管用平行めねじ(記号Rp)の3種類があります。この平行めねじ(Rp)は、「管用平行ねじ」に規定されている平行めねじ(G)と寸法許容差が異なるため、別のねじとして扱われます。ねじの組み合わせは、RとRc、またはRとRpです。
  4. ねじ山数は1インチ当たりの数を表しています。
  5. dはおねじ外径、Dはめねじ谷の径です。ただし、テーパねじでは基準径における数値です。
  6. d1はおねじ谷の径、D1はめねじ内径です。ただし、テーパねじでは基準径における数値です。

1-5-2-4 ユニファイねじ(ISOインチねじ)

ISOで規定された汎用のインチ三角ねじです。
ねじ山の角度60度。接尾記号「UN」で識別される。
ねじ山は角度60度。汎用として、呼び径に対するピッチの細かさにより「並目」(UNC)、「細目」(UNF)、「極細目」(UNEF) が規定される他、航空宇宙機器用 (UNJ) がある。

日本では航空機などごく一部での採用にとどまるが、米国では広範に使用されています。
日本のJISには並目と細目のみが採用されています。

1-5-2-5 ウイットワースねじ

ねじ山の角度55度のインチ三角ねじです。
1834年に世界に先駆けて、イギリス人のホイットワース(Whitworth)により考案されました。

JISでも規定されていたが、1965年に廃止されています。
日本では主に建築分野で使用されています。

1-5-2-6 アメリカ管用ねじ

管の接続に使われるねじ山の角度60°のインチ三角ねじです。
テーパねじと平行ねじとがあり、テーパねじにおけるテーパの傾きは16分の1です。

日本では一般用管用テーパねじ「NPT」や気密管用テーパねじ「NPTF」(共に接尾記号)が使用されます。

1-5-3 表記法

ねじ部品を特定するための要素には、巻きの方向、条数、ねじ溝の形状、径及びピッチとがあり、通常これらの要素を名前に並べる事でねじの種別が表されます。
例えば「左2条、直径8mm、ピッチ1mmのISOメートル三角ねじ」「右1条、直径1/4インチ、(インチあたり)20山のユニファイ(並目)ねじ」と表します。
ねじの多くが「右1条」であるために、この場合は省略されることがあります。

規格化されたねじの場合、それぞれの規格ごとに表記の仕方が定められており、それによれば先の2つの例はそれぞれ「L2N M8×1」「1/4-20 UNC」となります。
 ピッチをmmで表すものは、「ねじの巻き方 ねじ山の条数 ねじの種類を表す記号 ねじの直径を表す数字×ピッチ - 等級」 となり、ユニファイねじでは「ねじの巻く方向 ねじ山の条数 ねじの直径を表す数字または番号 山数 ねじの種類を表す記号 - 等級」、ユニファイねじ以外のピッチを山数で表すものでは「ねじの巻く方向 ねじ山の条数 ねじの種類を表す記号 ねじの直径を表す数字 山 山数 - 等級」となります。

M:メートルねじ おねじ
MF:メートルねじ めねじ
G:管用平行ねじ
R:管用テーパねじ(テーパおねじ)
Rc:管用テーパねじ(テーパめねじ)
Rp:管用テーパねじ(平行めねじ)
NPT:アメリカ管用テーパねじ(テーパおねじ)
UNC:ユニファイ並目ねじ
UNF:ユニファイ細目ねじ
S:ミニチュアねじ
Tr:メートル台形ねじ
TW:29度台形ねじ(ISO規格にはありません)