1-9.ガスケット

ガスケット(gasket)とは、構造に気密性、水密性を持たせるために用います固定用シール材です。
固定用シール材のガスケットに対し、運動用シール材はパッキンと呼ばれています。

ガスケットは、配管の継ぎ手や圧力容器のマンホールやバルブボンネットへ挟み込んで圧縮し、その隙間を塞ぐと同時に、流体の漏れ又は外部からの異物の進入を防止するものですが、耐熱、耐圧力、耐薬品性、施工性、加工性、価格などの見地で様々な種類のものが使用されます。ガスケットは石油精製 プラント・石油化学プラント・電力プラント・製紙プラント・ビル設備、造船等の産業分野で、内部圧力が3MPa以下で、温度も低い流体には、軟質ガスケット、圧力・温度が高い流体にはセミメタル・メタルガスケットが数ヶ月から数年までの交換頻度を持って使用されます。

一般的に、多くのガスケットと呼ばれるものは、ジョイントシートを指すことが多く、旧来、軟質ガスケット、セミメタリックガスケットに広く石綿(アスベスト)が使用されてきましましたが、現在では殆ど使用されていません。

1-9-1 軟質ガスケット

1-9-1-1 ゴムOリング

断面丸型のゴムリング成型品で、“Oリング”と呼ばれます。溝にはめ込んで、最高25MPaまでの圧力をシールすることができます。小さな締付荷重で高いシール性が得られるメリットがありますが、継手面にゴムOリングに合わせた溝加工を施さなければなりません。

1-9-1-2ゴムシート(全面座用)

厚さ1.0mm~3.0mmのゴムシートを打ち抜いたガスケット。天然ゴム・ニトリルゴム・クロロプレンゴム・エチレンプロピレンゴム・ブチルゴム・シリコーンゴム・フッ素ゴム・パーフロロゴム等のゴム材質を、耐候性、耐薬品性、耐熱に応じて選定します。ゴム特有の弾性、緻密性から、低締付面圧でも相手面に密着し、高いシール性が得られる特長がありますが、圧縮破壊面圧が低いため、構造上接触面積が小さく高い締付面圧が負荷される平面座のフランジには不向きで、専ら接触面積が広い全面座のフランジに使用されます。

ゴムシートの耐熱・耐圧
材質 使用温度範囲 耐圧
天然ゴム -20 〜 100℃ 1MPaまで
ニトリルゴム -30 〜 120℃ 1MPaまで
クロロプレンゴム -30 〜 120℃ 1MPaまで
エチレンプロピレンゴム -40 〜 150℃ 1MPaまで
ブチルゴム -30 〜 150℃ 1MPaまで
シリコンゴム -60 〜 230℃ 1MPaまで
ふっ素ゴム -15 〜 150℃ 1MPaまで
パーフロロゴム 0 〜 200℃ 1MPaまで

1-9-1-3 ジョイントシート

ゴム、ポリアミド繊維、ガラス繊維、膨張黒鉛などを均一に混合させた後加熱ロールで加圧圧延した厚さ0.4mm~3.0mmのシートを打抜いたガスケット。広く使用される代表的なガスケットとして位置づけられ、単に“ガスケット”というと、ジョイントシートを指すことが多く、厚さ1.5mm、3.0mmのものが代表的厚さとして使用され、入手も容易です。旧来は石綿を主材とする石綿ジョイントシートを指しましたが、現在は石綿ジョイントシートは国内製造されていません。

ジョイントシートの耐熱・耐圧

材質 使用温度範囲 耐圧
汎用グレード -100 〜 100℃ 3MPaまで
高温グレード -200 〜 260℃ 4MPaまで

1-9-1-4 膨張黒鉛シート

膨張黒鉛を基材とするシートガスケット。補強材として、中芯にステンレス鋼板を挟んだものが広く使用されます。最高400℃ まで使用でき、耐熱性、耐薬品性に優れていますシートガスケットでありますが、表面の膨張黒鉛が軟らかく、中芯が硬いことから、加工が難しく傷つき易いので、取り扱いは慎重に行わなければなりません。

膨張黒鉛シートの耐熱・耐圧

材質 使用温度範囲 耐圧
ステンレス鋼板なし -240 〜 400℃ 3MPaまで
ステンレス鋼板入り -240 〜 400℃ 5MPaまで

1-9-1-5 PTFEシート

PTFE(テフロン)のシートガスケット。PTFEのクリープ特性を改善させるため、充填剤をブレンドしたタイプが広く使用されます。耐薬品性、クリーン性に優れたガスケットでありますが、高温で軟化するPTFEの特性から、高温での長期使用においては信頼性に欠けます。さらに温度変動、圧力変動等によりガスケット面への応力変動が繰り返し発生する場合はクリープを発生させやすいので渦巻きガスケットのフィラー材として使用することが望まれています。

PTFEシートの耐熱・耐圧

材質 使用温度範囲 耐圧
純PTFE -100 〜 100℃ 1MPaまで
ガラスファイバー充填PTFE -100 〜 150℃ 2MPaまで
無機充填材入りPTFE -100 〜 200℃ 3MPaまで

PTFEジャケット形

ジョイントシートなどの中芯材をPTFE(テフロン)の薄皮で被覆したもの。中芯材の柔軟性と、PTFE薄皮のの耐薬品性、クリーン性を兼ねそなえたガスケットです。

1-9-2 メタルガスケット

1-9-2-1 メタルジャケット

無機質の中芯クッション材を金属薄板で被覆したガスケット。ガスケット表面が金属であるため、相手材との馴染みが悪く、締付には高い締付力を要します。熱交換器、熱風配管などに使用されています。高いガスシールを得るのは難しく、渦巻きガスケットやカンプロファイルガスケットへの変更が進んでいます。

メタルジャケットの耐熱・耐圧

材質 使用温度範囲 耐圧
汎用グレード 〜 530℃ 6MPaまで
高温グレード 1300℃ (金属材質の耐熱温度による) 6MPaまで

1-9-2-2 うず巻形ガスケット(Spiral-wound gaskets)

V字形をした金属薄板と軟質のフィラー材を交互に重ねうず巻状に巻きつけたガスケット。軟質ガスケットに比べ高温・高圧のシールが可能ですが、高い締付面圧が必要になります。フィラー材は主にノンアスベストフィラー、膨張黒鉛フィラー、PTFEフィラー、高温用複合フィラーの4種類があり、流体、温度、圧力に合わせて選定を行います。通常450℃までの流体には、膨張黒鉛フィラーが主に使用されます。シール性、応力緩和特性、耐熱性に優れており、近年石綿系ジョイントシートからうず巻形ガスケットへの切替えが進んでいます。薄く剛性の低いフランジで締めた場合、フランジがローテーションを起こし歪むこともあります。

うず巻形ガスケットの耐熱・耐圧

フィラー材質 使用温度範囲 耐圧
ノンアスベストフィラー 〜 350℃ 25.9MPaまで
膨張黒鉛フィラー -240 〜 450℃ 43.1MPaまで
PTFEフィラー 〜 300℃ 10.3MPaまで
高温複合フィラー 〜 800℃ 25.9MPaまで

1-9-2-3 カンプロファイルガスケット(Kammprofile gaskets)

特殊なのこ歯形状の溝を両面に円周上に彫った金属リングの両面に軟質の表層材貼り合わせたガスケット。うず巻形ガスケットに次ぐ高温高圧流体に使用可能でありますが、まだ日本国内における使用実績は多くありません。うず巻形ガスケットと比べ、ハンドリング時バラケの心配が無い、内外輪の必用性がなくコンパクトに設計できるといったメリットがあります。金属リングの劣化が無ければ、表層材を貼り替えることにより再利用が可能。主に機器のガスケットとして使用されます。

カンプロファイルガスケットの耐熱・耐圧

表層材質 使用温度範囲 耐圧
膨張黒鉛 〜 400℃ 44.0MPaまで
PTFE 〜 260℃ 11.0MPaまで

1-9-2-4 メタル中空Oリング

金属の細管をOリング状に成型したガスケット。溝にはめ込んで使用しますが、厳しい溝寸法精度、表面粗さが求められます。高温高圧までシールでき、線シールでありますため継手の軽量化が可能。一般的な配管に使用されることは多くありません。

メタル中空Oリングの耐熱・耐圧

使用温度範囲 耐圧
〜 700℃ 70MPaまで

1-9-2-5 リングジョイント

金属材料をリング状に切削加工したガスケット。軟質材が使えない高温・高圧下でのガスケットとしてフランジに掘られた溝に入れて使用されます。また、浸透漏れが許されない高度なシールを要求される時にも使用されます。配管用としてJPI 7S 23 に規定される断面形状がオクタゴナル(octagonal)(八角形)、オーバル(oval)(楕円)のものが主に使用されます。施工にはすり合わせ(溝とガスケットをこすり合わせ、密着するか確認する作業)を行わなければならず、取り付けにはスキルを要します。

1-9-2-6 金属平形ガスケット

金属板を打抜いたガスケット。無酸素銅製のものは、超高真空用に用いられます。

1-9-3 その他ガスケット

1-9-3-1 マンホールガスケット

無機質の織布にゴムや無機粉末を含浸したガスケット。柔らかく歪んだ面にも馴染みやすいが、布目を通って微量の浸透漏れがありますため若干の微量漏れが許される排ガスなどの高温且つ低圧の流体に使用されます。

1-9-3-2 シールテープ

JIS名称は、「シール用四ふっ化エチレン樹脂未焼成テープ(生テープ)」(JIS K 6885)
シールテープの材質はテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)

シールテープは、水道管や空気管など、液体や気体を導く配管の接続部分等に生じたすき間を埋めるために使用されるシール材です。配管の接続部分は互いにねじが切られており、それらをかみ合わせることで接続を果たしています。しかし、接続箇所のねじ切りを完全に整合させることは難しく、ここにわずかなすき間が生まれます。このすき間は液体や気体にとっては容易に通過できるものであるため、これを埋めておかないと漏水・漏気・漏油の原因となります。

薄いテープ状に加工しリールに巻かれた状態で販売されており、テープ幅や巻き長により種類があります。径の太い配管には幅の広いテープが適しています。ホームセンターなどで水道配管補修材として入手できるほか、配管継ぎ手など、水道配管部品には少量ながら付属している場合もあります。

シールテープは、接続する配管の雄ねじに適量を巻き付けたのち、雌ねじにかみ合わせます。
雄ねじの先端、一山から二山程度あけた部分から巻き始めます。巻き始め部分で数回ほど巻き付けたのち、ねじの根本に向かってテープを重ね合わせるようにして巻きつけていきます。
シールテープはねじ山に沿うようにして巻きます。このとき逆方向に巻いてしまうと、ねじを挿入するときにシールテープが取れてしまいます。 また、先端部よりテープがはみ出してしまうと、管内にシールテープの切れ端が侵入することになり、配管のつまりの原因になります。
一旦締め付けた物を再び緩めるとシールテープの圧縮力が無くなり漏れの原因となるので注意が必要です。
水道用途ではより漏れに対する信頼性を向上させるため液状シール材を併用するのが主流です。
以前はLPガス配管でも使われていたが近年液状シール材に置きかえられつつあります。