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比例制御でうまく制御出来るように考えられますが、実際には、現在値が設定値に近づくと問題がおきます。
それは、操作量が小さくなりすぎ、それ以上細かくは制御出来ない状態が発生します。
その結果、設定値に極めて近い現在値の状態で安定した状態になってしまいます。
こうなると、設定値に近くはなるのですが、いつまでたっても設定値にピッタリとはならない状態となってしまいます。
このわずかの誤差のことを「オフセット」といいます。
オフセット(Offset)とは、設定値と現在値との小さな差が、一定の値で永続的に続くことです。
かんたんに言うと「ズレ」です。
このオフセットを無くすために使われるのが積分制御です。
つまり、わずかな差を時間的に累積し、ある大きさになった所で操作量を増して差(オフセット)を無くすように動作させます。
このように、比例動作に積分動作を加えた制御を「PI制御」と呼びます。
前項でご説明したように、比例制御とは、比例帯内での現在値と設定値の差(偏差)に比例した加熱をする制御のことで、比例帯の目安はメーカーの初期設定で5~10%に設定されています。
● オフセットはどんな理由で現れるのでしょうか?
比例制御では、設定値の近くでは安定性を重視して加熱量が小さくなりすぎ、それ以上細かくは制御出来ない状態が発生します。結果は、設定値に極めて近い現在値で安定した状態になってしまいます。現状を維持してしまい、変化させるだけの熱量に達しないからです。
● オフセットはどんなときに現れるのでしょうか?
①加熱対象が大きすぎたり、小さすぎる場合。
装置やシステムを設計した条件に比べ、大きな負荷を入れた場合、この負荷によって奪われる熱量が増える為、設定値より低いところで安定します。逆に負荷の小さな物を入れた場合は、その逆となり、高いところで安定します。
②装置の周囲温度が変化した場合
冬場などは、装置の周囲温度が低く、奪われる熱量が増えるので、設定値より低めのオフセットが出やすいです。逆に夏場など、周囲温度が高く、放熱が少ないので、高めのオフセットが出やすいです。
③設定値を変更した場合
例えば500℃に調整した加熱炉では、500℃よりも高い温度で使用すると、低めのオフセットが出やすく、500℃よりも低く設定した場合、高めのオフセットが出やすいです。
● 内部ではどんなことをしているのでしょうか?
まず、比例制御だけでは理論的にオフセットが無くならないということが前提となります。長時間経っても安定している現状を考えると、調節計から何らかの出力信号が出ているのは明らかです。しかし、現状の出力では力不足で、目標値まで達しないで安定しているということです。
このオフセットをゼロするためには、現状の出力信号にズレを修正する分を加えた出力信号を出してやる必要があります。これを出すのが積分制御の役目です。積分制御は1.過去の偏差を蓄え、2設定時間の範囲で偏差を解消する、ということです。
現在値PV の差の積分がゼロになって、設定値SV温度に到達するまで、積分制御は比例帯を元のSVから高い温度の方にずらして出力して、オフセットを解消します。
積分時間が長すぎると、時間当たりの修正量が足らず、何時までもオフセットが解消しません。
積分時間が短いと修正が強く掛かることとなり、大きな修正量が、短時間で働き、偏差を短時間で修正することができます。
しかし、積分時間を短く設定しすぎると、ハンチングが起きやすく、安定した制御結果が求められなくなるので、注意が必要です。
メーカー初期設定では120秒が多く、設定する目安としては100~150秒ぐらいです。
●積分(Integral )制御とは、設定時間内でオフセットをゼロにするために、出力を加減する修正動作です。
積分制御は、単独でも制御能力があります。したがって、I 動作のみの制御が可能です。しかし、PI制御と比べて、大幅に、制御応答が悪くなります。
アナログ制御の、初期の時代には、簡単で安くできる場合があることから、I 動作単独の制御が、使用されたことがあります。しかし、最近では、使用されることは、ほとんどありません。