2-3.放射温度計

放射温度計

2-3.放射温度計

放射温度計とは

手の平を太陽に向けると暖かく感じますが、これは太陽から放射されている赤外線を手の平の温感神経細胞が感知しているためです。
温感神経細胞で感知した温度情報を神経を通して脳に伝えて、「熱い」と認識されます。

太陽に限らず、全ての物質は、物質の温度に比例して赤外線を放射しています。
放射温度計は物質から放射される赤外線を捕捉して温度を測定します。

放射温度計の原理

放射温度計はサーモパイルを使用します。
サーモパイルとは物質から放射される赤外線を吸収し、温度に応じた電気信号を発生する検出素子です。

サーモパイル – SEMITEC株式会社

サーモパイルは多数の熱電対を搭載し、中心部に温接点を集め、周辺部に冷接点を配置します。
物質から放射された赤外線をレンズでサーモパイルに集光し温接点を加熱します。
ゼーベック効果で温接点と冷接点との間に電圧差が生じ、温度測定が可能になります。
これをアンプで増幅し、放射率補正を行って温度を表示します。

放射温度計の特長

放射温度計の最大の特長は非接触で温度測定することです。

放射温度計を使用する主要な長所

移動・回転する物質の温度測定
熱電対を接触させると表面にアタリ瑕が発生するような物質の温度測定
熱電対を接触させると表面温度が変化するような小熱容量物質の温度測定

放射温度計を使用する主要な短所

物質に合わせて放射率の設定が必須である
物体の内部を温度測定ができない
気体の温度測定ができない

放射温度計使用時のポイント

放射率について

加熱対象物によって熱放射の放射率ε が異なるため、正しい放射率を設定しないと、測定温度が正しく測れません。
放射率は黒体を1と定義します。
ゴムやセラミックなどでは0. 95でだいたい間に合います。
金属等表面光沢がある加熱対象物は、一般的に放射率が低くなります。

放射率の決め方

再現性を求める使用方法で、加熱対象物の放射率がだいたいでもよい場合、文献に記載されている放射率を参考にします。
キルヒホッフの (放射エネルギー)法則より、物質の吸収したエネルギーと放射するエネルギーは等しいので吸収率=放射率です。

参考サイト 遠赤外線の吸収率
https://www.heat-tech.biz/products-epl/eph-gj/eph-gj-ek/1181.html

正確な放射率が必要な場合は、放射温度計と熱電対など接触式温度計の2通りで測定し、表示値が一致するように放射率を設定します。

放射率設定誤差

放射温度計の設定した放射率が測定対象物の正しい放射率と異なる場合、測定誤差の要因となります。
放射率と測定対象物の温度の関係は直線ではありませんので、測定条件が異なると測定温度が変わります。
放射率の設定が1%異なっても温度が1%異なるわけではありません。
それ以上の場合もあれば、それ以下の場合もあります。

放射率の設定誤差と温度の測定誤差の関係(代表例)

測定対象物の大きさと、スポット径と測定距離

放射温度計は測定できる範囲(スポット径と呼びます)と測定距離が決まっています。
正確に温度を測定するためにはスポット径と測定距離を定格で使用する必要があります。
放射温度計を使用する際、必ずスポット径が物体よりも小さく設置する必要があります。