2. 温度計測機器の種類と選び方

温度計測の精度や効率を高めるためには、最適な温度計を選ぶことが重要です。温度計測にはさまざまな機器があり、それぞれ特有の特性や利点を持っています。適切な機器を選択することで、より正確な測定結果を得ることができ、エネルギー管理や品質管理を効率的に行うことが可能になります。本章では、代表的な温度計測機器の種類とその選び方について解説します。

2.1 温度計の種類

温度計は、大きく分けて接触型と非接触型に分類されます。
接触型温度計:測定対象に直接接触して温度を測定する(例:サーミスタ、熱電対、測温抵抗体)。
非接触型温度計:赤外線を利用して物体の表面温度を測定する(例:放射温度計、サーモグラフィカメラ)。

ここでは、それぞれのタイプに分けて特徴を紹介します。

2.1.1 接触型温度計

接触型温度計は、対象物と直接接触することで温度を計測します。主な種類は以下の通りです。

サーミスタ

サーミスタは、「Thermal(熱)」と「Resistor(抵抗)」を組み合わせた言葉で、温度によって電気抵抗が変化する半導体素子です。サーミスタは酸化ニッケルや酸化マンガンなどの金属酸化物を使用しており、温度が変化すると内部の電子の動きが変わることで電気抵抗が変化します。これを利用して、温度を電気信号として測定できます。
特徴:高精度、応答速度が速い。
温度範囲:-50℃~+300℃(高温タイプ500℃)
用途:家庭用電化製品、自動車、医療機器、精密機器の温度管理。
注意点:自己発熱により温度が上昇し、測定値に誤差が生じる。

熱電対

熱電対は、異なる2種類の金属を接続し、その接点に温度差が生じると発生する電圧(ゼーベック効果)を利用して温度を測定する温度計です。
特徴:広い温度範囲に対応、耐久性が高い、小さな対象物の測定が可能。

温度範囲:

K型熱電対:-200℃~+1200℃(汎用)
R型S型熱電対:最大+1600℃(高温向け)
用途:ファクトリオートメーションやプロセス制御から自動車,航空宇宙,軍事,エネルギー,金属製造,医療など、あらゆる業界
注意点:長時間使用すると、材料の劣化や酸化により測定誤差が大きくなる。

測温抵抗体(RTD)

“測温抵抗体は、温度が変化すると電気抵抗が変わる金属(白金など)を利用した温度センサー です。
高精度で安定した温度測定が可能で、産業や研究用途で広く使われています。”
特徴:高精度±(0.15+0.002|t|℃/クラスA)で安定性が高く、長期間の使用が可能。
温度範囲:-196℃~+600℃(一般的な白金抵抗体の場合)。
用途:半導体製造、化学プラント、食品加工などの精密温度管理。
注意点:サーミスタや熱電対に比べてサイズが大きく、温度変化に対する反応がやや遅い。

2.1.2 非接触型温度計

非接触型温度計は、物体の表面から放射される赤外線を測定し、その強度から温度を算出します。

放射温度計

放射温度計は、赤外線を利用して表面温度を測定する温度計です。
特徴:非接触で温度の測定が可能、高温や危険な対象物にも対応。
温度範囲:-50℃~+3000℃(機種による)。
用途:鉄鋼ガラス工場、食品加工、医療、HVAC(空調設備)。
注意点:色や材質により放射率が変わり、放射率補正を適切に設定しないと、測定温度に誤差が生じる。

 

サーモグラフィカメラ

サーモグラフィカメラは、放射温度計と同様に赤外線を利用しますが、温度分布を画像として可視化できる点が特徴です。
特徴:温度のムラを可視化、一度に広範囲を測定可能。
用途:設備点検、異常発熱の検知、建物の断熱診断。
注意点:色や材質により放射率が変わり、放射率補正を適切に設定しないと、測定温度に誤差が生じる。

2.2 温度計の選び方

2.2.1 測定対象の温度範囲

温度計を選定する際には、測定対象の温度範囲を考慮することが重要です。
低温(-50℃~300℃):サーミスタ、測温抵抗体、熱電対。
中温(-200℃~1200℃):高温用サーミスタ(500℃)Pt100測温抵抗体(600℃)、K型熱電対(1200℃)
高温(1200℃以上):R型S型熱電対、放射温度計。

2.2.2 精度と安定性

高精度が求められる場合:測温抵抗体、高精度なサーミスタ。
温度変動がある環境:応答速度が速い熱電対やサーミスタが適している。

2.2.3 測定環境

過酷な環境(高温、振動、衝撃):熱電対。
遠距離高温の非接触測定:放射温度計、サーモグラフィカメラ。
狭い空間:サーミスタ、熱電対。

2.3 まとめ

温度計測は、使用する機器によって結果が大きく異なるため、用途に最適な機器を選定することが重要 です。

適切な温度計を選ぶことで、温度管理がより効率的かつ正確に行えるようになり、製品の品質向上やエネルギー管理に貢献できます。この章で紹介した温度計測機器の特徴や選定方法を参考に、最適な温度計を選んでください。