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7. 温度測定のタイミングとその影響

温度測定の精度を向上させるためには、「いつ測るか」という測定タイミングの選定が極めて重要です。同じ対象物であっても、加熱・冷却の進行状況や周囲環境の変化、測定対象の熱慣性などの影響により、異なる温度が観測されることがあります。適切なタイミングで測定を行わなければ、実際の温度を正確に把握できず、測定結果が目的とずれてしまう可能性があります。
例えば、ハロゲンヒーターを使用して厚みのある金属を加熱するプロセスでは、表面温度は急速に上昇しますが、内部温度がそれに追いつくまでには時間を要します。また、屋外や工場などの環境では、測定する時間帯や周囲の温度変化によっても測定値が変動するため、測定タイミングの適切な管理が求められます。
本章では、以下の3つの主要な要因が測定タイミングに与える影響について詳しく解説します。

1.加熱冷却の進行による温度変動
2.環境温度の変化による影響
3.測定対象の熱慣性による影響

7.1 温度変動の要因とその影響

温度は常に一定ではなく、時間とともに変化します。測定タイミングを誤ると、実際の温度とは異なる結果が得られる可能性があり、測定データの信頼性が低下する原因となります。以下では、測定タイミングが温度変動に与える影響について詳しく説明します。

7.1.1 加熱冷却の進行による温度変動

加熱冷却のプロセスでは、測定のタイミングによって異なる温度が観測されます。特に、ハロゲンヒーターのような赤外線加熱を利用する場合、熱が直接照射される部分とされない部分で温度差が発生するため、測定のタイミングと位置を適切に選ばないと正確な温度を得ることができません。

ハロゲンヒーターを用いた加熱プロセスの温度変動の例
加熱開始直後: 表面温度が急速に上昇するが、内部温度は表面温度ほど急速に変化していない。
加熱継続中: 内部温度が徐々に上昇し、表面温度との差が縮まる。
加熱完了後の安定状態: 内部温度と表面温度がほぼ均一になり、安定した温度が測定可能となる。

適切な測定タイミング
1.加熱または冷却が完了し、内部温度が均一になるのを待ってから測定すること
2.表面温度だけでなく、内部温度も考慮しながら測定を行うこと
3.温度変化が激しい段階では、時間を変えて複数回測定することでデータの正確性を向上させる

7.1.2 環境温度の変化による影響

測定結果は、測定対象物そのものだけでなく、周囲の環境温度の影響も受けます。特に、屋外での測定やエアコンの稼働状況によって変動する室内環境では、測定時間帯による温度変動が無視できません。

1. 屋外環境における影響
朝、昼、夜で気温が大きく異なるため、異なる時間帯で測定すると比較が難しくなる。
例: 夏場のアスファルトの温度は、昼間は60℃以上になるが、夜には30℃以下に低下する。

2. 室内環境における影響
エアコンの稼働状況や人の出入りによって、室温は時間帯によって変化する。
例: 工場内では、機械の稼働に伴い室温が上昇し、同じ測定でも時間帯によって異なる結果が得られる。

対策
1.測定時間を統一し、比較可能な条件で測定を行う
2.環境温度の影響を受けにくい場所やタイミングで測定する
3.連続測定を行い、データの平均値を取ることで変動の影響を抑える

7.1.3 測定対象の熱慣性による影響

熱慣性とは、物体が温度変化に対して示す応答の遅れを指し、主に熱容量と熱伝導率によって決まる。特に、熱容量の大きい物体は温度変化が緩やかになり、熱の伝達速度が小さい場合、温度分布の変化が遅れるため、測定タイミングによって得られる値が異なることがある。

熱慣性が測定に与える影響の例

1. 金属ブロックの加熱
加熱直後: 表面温度は急速に上昇するが、内部温度はほとんど変化しない。
数時間後: 内部まで熱が伝わり、均一な温度が測定可能になる。

2. 厚みのあるプラスチック部品
急速加熱時: 表面は短時間で温まるが、内部は温度上昇に時間がかかる。
時間経過後: 内部まで熱が浸透し、安定した温度が得られる。

適切な測定タイミング
測定対象の内部温度が安定するまで待つ
測定結果をより正確にするため、複数回の測定を行う
厚みのある物体では、表面だけでなく内部温度も考慮する

7.2 まとめ

温度測定のタイミングを誤ると、実際の温度とは異なる値が得られる可能性があります。適切な測定タイミングを選定することで、より信頼性の高いデータを得ることができます。

適切な測定タイミングのポイント
✅測定前に、加熱または冷却が完了し、温度が安定していることを確認する。
✅.正確なデータを取得するには、表面温度と内部温度の両方を考慮する。
✅環境要因の影響を最小限に抑えるために、測定タイミングを標準化する。
✅急速に変化する状況で精度を向上させるために、一定期間にわたって複数の測定を実施する。

適切な測定タイミングの選定が、正確な温度管理の鍵となります。

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