第1章では材料内部の水分に焦点を当てましたが、第2章では空気中に蒸気という形で放出された水分に焦点を当てます。
湿度の定義
湿度とは、空気のしめりぐあいを数字で表したものです。
別な言い方をすると、湿度とは空気中の水分(水蒸気)の量です。
湿度にはいろいろの定義が有ります。
相対湿度 RH
相対湿度とは、ある気温で大気が含むことのできる水蒸気の最大量に対して、実在の水蒸気量を比率で表したものです。
RH 相対湿度
mw 空気中の水蒸気量(g/m3)
mw max 飽和水蒸気量(g/m3)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律である「建築物衛生法」 では、相対湿度の管理基準値は40~70%と定められています。
85%超:気温34℃が人間が耐えられる限界で、身体に熱がこもると熱疲弊や熱射病につながり、高温多湿の危険な環境となります。
70%超:汗の蒸散を妨ぎ不快感が生じる、カビの生育が早い、ダニの生育 が早い
40%-70%:適正(建築物衛生法の管理基準値)
40%未満:口腔粘膜が乾燥する、インフルエンザウィルスの生存率が高い、 静電気が生じやすい
絶対湿度
容積絶対湿度と重量絶対湿度(混合比)があります。
国際的には絶対湿度と言えば容積絶対湿度のことです。
日本では空調に関係する分野で重量絶対湿度が「絶対湿度」とされているので、注意が必要です。
容積絶対湿度 VH
容積絶対湿度とは大気の単位容積に含まれる水蒸気の量を重量で示したものです。(単位:g/m3)飽和水蒸気量ともいわれます。
VH 容積絶対湿度
mw 空気中の水蒸気の質量
Va 大気の容積
重量絶対湿度 SH
水蒸気を含む空気を湿潤空気といい、そこから水蒸気を除いた空気を乾燥空気といます。
湿潤空気 = 乾燥空気 + 水蒸気(水)
乾燥空気の重量に対して湿潤空気中に含まれる水蒸気の重量の比SHを重量絶対湿度といいます。
SH 重量絶対湿度
mw 空気中の水蒸気の質量
mDA 乾燥空気の重量
飽和モル湿度 Hm
乾燥空気に対する水蒸気のモル数の比のこと
Hm 飽和モル湿度
P 全圧(全 圧で完全に飽和したときの乾燥空気あたりの水蒸気mol数)
p 分圧 (実際のmol数)
比較湿度 φp
その気温における飽和湿り空気の絶対湿度に対する、実際の絶対湿度の比を%で表したものです。
比較湿度は、飽和状態までどの程度余裕があるかを示しているので、飽和度と呼ばれることもあります。
φp 比較湿度
P 全圧
p 分圧
p* 飽和蒸気圧
実効湿度 He
実効湿度とは、過去数日間の湿度の履歴を考慮した湿度のことで、木材の乾燥度を示し火災の発生率に関係します。
H0 , H1 , H2 , …をそれぞれ当日、前日、前々日、・・・の平均相対湿度とすると、実効湿度He は下記のように表されます。
気象予報では通常r は0.7とし、乾燥注意報を発表する際に最小湿度(1日の相対湿度の最小値)と実効湿度が目安にされています。
具体的な基準値は、地域によって異なり、実効湿度に関しては概ね60%前後です。(最小湿度は大きな差があります。)
算出式で用いる湿度の遡上日数は、区切りをつけるため数日間とする場合が多くあります。
実効湿度が60~50%以下になると火災件数が増えます。