水が蒸発して水蒸気となり移動するためには、材料表面と対流層の空気との間に水蒸気の圧力差が必要です。
材料表面の水蒸気は飽和しているので、圧力は飽和水蒸気圧です。
対流層の圧力は湿度に比例します。
例として25℃の飽和水蒸気圧は3.17kPa(濃度は1.28mol/m3)、相対湿度70RH%は2.22kPa(濃度は0.896mol/m3)
この圧力差の3.17-2.22=0.95kPaが水蒸気の拡散の推進力となります。
材料表面の飽和水蒸気圧をes、対流層の水蒸気圧をeとすると、
es>eのときは水蒸気が対流層に移動して蒸発が進行します。
es<eのときは対流層から気体境膜に水蒸気が移動して、表面に水蒸気が凝縮するか、材料に吸収されます。
表面に水蒸気が凝縮して液化することを結露といいます。
気体境膜は材料表面の水蒸気の拡散によって生成します。
気体境膜の厚みは、表面の広さ、形状、空気の流れの状態によって異なり1mm~10mm以上になります。
気体境膜の厚みの差は、水の蒸発速度に影響します。
気体境膜の中には密度の差が生まれ、その密度の勾配に沿って水蒸気は移動します。
乾燥工程の定率乾燥期は気体境膜にフィックの拡散の法則が現れます。
w = -D dpv/dZ
w : 単位時間に透過する水蒸気の質量
D : 拡散係数
pv : 水蒸気の密度
dpv/dZ: Z軸方向の水蒸気の密度勾配
(-)符号は、密度が減少する方向に水蒸気が移動することを意味しています。
水蒸気の拡散係数Dの式は
t :温度℃
Po:標準気圧(=1013.25hPa)
P :空気の圧力
拡散係数は絶対温度の1.75乗に比例し、圧力に逆比例します。
標準気圧での水蒸気の拡散係数は0.220cm2/s ( 0℃ )です。
2.56×10-5m2/s
DAB= 2.88×10-5 m2/s とわかっています。
この式は水蒸気を含む空気を理想気体として扱うと、水蒸気の密度は水蒸気圧に比例するので密度勾配の代わりに水蒸気勾配も使用できます。
w = -DMv/RT x de/dZ
w :単位時間に透過する水蒸気の質量
D :拡散係数
Mv:水蒸気のモル質量
R :普遍気体定数
T :絶対温度
e :水蒸気の密度の分圧
de/dZ:水蒸気の密度勾配
DMv/RTは水蒸気勾配に対応する拡散係数とも呼ばれます。