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熱収支とは、ある系に入り込んだ熱量と出ていった熱量、および系の内部での発熱、吸熱の総和です。
エネルギー保存の法則により、これらの量は
(系がもつ熱量の変化) = (系に入る熱量) - (系から出る熱量) + (系内部の発熱量) - (系内部の吸熱量)
という式になります。
乾燥工程では、位置エネルギー、運動エネルギーおよび仕事などによる熱変化量は極めて小さく、
無視することができますから、検討要素から省くことができます。
また、工場や研究所などの一般的な環境では(系がもつ熱量の変化) 0です。
さらに乾燥工程では、発火や自己発熱はしないものとされているので、(発熱量)も0です。
0を代入すると
0 = (系に入る熱量) - (系から出る熱量) + 0 - (系内部の吸熱量)
式を整理すると
(系に入る熱量) = (系から出る熱量) + (系内部の吸熱量)
または、
(系内部の吸熱量) = (系に入る熱量)- (系から出る熱量)
という式になります。
系に入る熱量とは、ヒーターの熱量x系に作用する効率%になります。
系から出る熱量とは、材料から放射、又は熱伝導される熱量です。
系内部の吸熱量とは、材料の昇温に使われる熱量と、水が蒸発するために使用する熱量です。
水が蒸発するために使う熱のことを「蒸発熱」または「気化熱」といいます。
加熱乾燥は、蒸発熱を連続供給することで乾燥を促進する方法です。
<<水1gの蒸発熱>>
温度℃ | 0℃ | 20℃ | 40℃ | 60℃ | 80℃ | 100℃ |
---|---|---|---|---|---|---|
蒸発潜熱 | 2502J | 2454J | 2407J | 2359J | 2309J | 2257J |
<<例 水1gを100wのヒーターで加熱乾燥する加熱時間を求める >>
これを下の条件で式に当てはめてみます。
大気圧下で20℃の水を1g蒸発させるのには2454J必要です。
系内部の吸熱量 = 2454J
系に入る熱量 = ヒーターの熱量 100w = 100J/s ※1Wは1J/sです。
系に作用する効率 = 条件1:100% 条件2:50%
系から出る熱量 = 条件1:0 条件2:20J/s
Xs = (系内部の吸熱量)/(系に入る熱量- 系から出る熱量)
条件1
Xs = ( 2454J) / (100Jx1.0- 0J)
Xs = 24.54s
約25秒の加熱が必要です。
条件2
Xs = ( 2454J) / (100Jx0.5- 20J)
Xs = 81.8s
約82秒の加熱が必要です。
同じ対象物を同じヒーターで加熱しても、条件が異なれば加熱時間に3倍以上の差が出ることもあります。